オールスター!

さてオールスターとくれば、誰の、どういうプレーにスポットを当てればいいのだろうかと思う。
初回、イチローがクレメンスからいきなり奪ったツーベースだろうか。それともMVPに選ばれたソリアーノのスリーラン・ホームランだろうか。あるいは、ジーターのあとのショートに入ったマイケル・ヤングの、素晴らしい送球だろうか。それとももっとマニアックに、クローザー・リベラの、一流打者が並んでも、全く圧倒的に見えたカットボールの威力なのだろうか。


今あげたプレーというのはあくまで僕の脳裏に残っているもので、試合を見た人にはそれぞれに、印象に残ったプレーがあるだろうと思う。
だがちょっとひねくれたことを言うと、オールスターを見てもっとも僕がひかれるのは、好プレーにではなく、よくぞこれだけの好漢を揃えてくれた、という出場メンバーに対してなのだ…。
それは彼らが素晴らしいプレーをするのは、半ばその能力や実績からして予想できることなのかもしれないが、同時に、たかが1回や2回の打席で、あるいは1イニングで、能力の全ての片鱗を見せることは無理ではないか、と思ってしまうからでもある。
だからもちろん、オースルターにファインプレーを期待してはいるが、全ての選手がこの試合だけで、全能力を提示できるわけではないとも思っている。そこで僕は、ファインプレーをした選手はもちろん十分に称えたいが、だからといって、活躍できなかった選手より、何もかもが優れていたとは思えなくなってしまう。
そういう相対的なことよりも、顔ぶれの魅惑さ。そっちの方に僕は、オールスターの絶対的な魅力を感じてしまう。


そのため一番好きな場面は、ゲーム中のどこかにあるわけではなく、始めの選手紹介の場面になる。そこでは先発メンバーの名が一番から順に、球場にコールされ、選手はダグアウトから現れ、一人ずつベンチの前に並んでいく。彼らが9人揃えば、完璧な建造物ができる。
なぜならその時点で、野球界で世界最高の選手9人が、ほぼ毎年そこに集結するからだ。
確かにそれは勝つためには最良のチームではないかもしれないが、想像できうる最高のチームではある。
そのチームが2つできるまでの間、そして完成した瞬間。その瞬間、《とうとう今年も九勇士がそろったか…》という感情が、楽しくてしょうがなくて、毎年見たくなってしまうようだ。