現在球界最高のセットアッパーはだれだ?〈3〉

最後に三人目はオクタビオ・ドーテル(アストロズ)をあげようと考えていた。しかしアストロズは、今オフにクローザーを放出しており、新しいクローザーを取る様子もないので、どうやら彼がクローザーをつとめそうである。
ドーテルはここ3年メジャーのセットアッパーの中では、最も安定した投球をしており、実力ナンバー1のセットアパーと言ってもよかった。だがクローザー転向でまたキャリアの新しい局面を向かえるだろう。
実は昨年は、クローザーを含めたリリーバー(先発投手以外の投手)で、1点台の防御率を記録したのは、実に13人もいた。00年は一人、01年は3人で、メジャー全体の防御率はほぼ横ばいなので、リリーバーの当たり年とも言える。
その中には、マリナーズ長谷川滋利や、その同僚で昨年の「スポーティング・ニュース新人賞」のソリアーノ、30歳の昨季まで独立リーグにいたブレンダン・ドネリー(エンゼルス)など、実力の割りにできすぎじゃないか?と僕には思える選手がいた。
このような1年間しか実質的に成績を残していない選手は、来年も同じような結果を残すかという予測は難しい。なぜならバッターったちもバカじゃないからいつもまでも同じではない、ということだ。
メジャーリーグは大味だ、彼らは野球に繊細ではないという認識は間違いだ。例えばあれほど短気なクレメンスが、試合後すぐに自分の投球をパソコンに打ち込んでることを知っている人は何人いるだろう。
年々進化することを受け入れなければ、何年もメジャーで生き残ることはできない。何年も第一線で活躍する野茂の素晴らしさは、まさに変化に適応できる点にある。彼は自身の誇りである速球勝負という姿勢は絶対に崩さないが、それ以外の点では、毎年少しづつ自分のスタイルを工夫して変えている。

そのため、リリーバーで防御率1点台という成績自体はとても素晴らしいものだが、彼らにナンバー1の称号はまだ相応しくないのではと、思えてしまう。3人の中では特に、素晴らしい速球を持つソリアーノに期待したいが、球の軌道が綺麗なまっすぐすぎるのも若干気になる点だ。
そんな中で最後に一人、今年一番期待するセット・アッパーをあげるなら、ホワイトソックスのダマソ・マーテをあげたい。高津の同僚である28歳左腕は、02年2.83(68試合登板)、03年1.58(71試合登板)と成長を続けている。
速球は140キロ半ばだが、カットボールとスラーブ(スライダーのスピードでカーブのように曲がる)の精度で勝負をしかける。ランナーが塁上にいても変わらないコントロールのよさが、彼の持ち味だ。
右に高津、左にマーテ、そして最後を締めるのが、昨年防御率5点台の屈辱を晴らさねばならないコッチ、というトリデンテ(三叉鉾)確立が,今シーズンのホワイトソックスの望む形だろう。