ミネソタシティの星

アメリカに「ベースボースアメリカ」という大変にマニアックなタブロイド版新聞がある。月2回発行されるその新聞は、マイナーリーグのことしか扱っていない。メジャーリーグの話題は一切載っていない。
もしメジャーリーガーのことが記事になっていたら、それは彼がマイナーリーグにいた頃に残した成績の話題である。あとは、ルーキーリーグから3Aまでの2週間分の戦績と順位、その間のマイナーリーグニュースが紙面のほとんどをしめる。(ちなみ大家がまだレッドソックス傘下のマイナーにいた頃も、しっかり名前は選手成績表にのっていた)。
いくらベースボールが国技のアメリカとはいえ、これほどマニアックな新聞の需要がどれだけあるのだろうと思うと、アメリカの野球に対する懐の深さが知れ、嬉しくなってしまう。こんな新聞を発行している時点で、野球が好きで好きでしょうがない人間がいるのは間違いないのだ。
だが、この新聞が決して侮れないのは、野球を批評する眼力が恐ろしく鋭いのである。もう一つの大手野球新聞「Baseball Weekly」(こちらは完全なメジーリーグ通信)もこれに比べるとスカウティングの信頼はやや落ちる。
一つその“批評眼”の例をあげるとすると、「アメリカ」は81年から独自に最優秀マイナーリーガーというのは選出している。実はこれがどこの有望新人セレクトよりもあてになるのだ。
01年はジョシュ・ベケットマーリンズ。昨年Wシリーズ MVP)、02年はロッコ・バルデリ(デビルレイズ。昨季最後までの新人王を争う)と選んだ選手は、ことごとく期待通りどころかそれ以上の働きをみせた。

その「アメリカ」が今年選んだ選手は、ツインズのジョー・モウアー捕手(20歳)。「アメリカ」だけなく、ツインズがどれほど彼に期待しているかは、レギュラー捕手のピアジンスキー(27歳)をジャイアンツに放出してしまったことでもわかる。
メジャー通算打率.301、強肩ではないが堅実な守備ができるオールスター出場キャッチャーを引き止めなかったのは、まだ一度もメジャー経験がないモウアーの成長のほうを球団が買ったからに他ならない。
そのモウアーは、まだ実際に僕は見たことがないので詳しくは分からないが、打撃は広角打法のスプレーヒッターに、2Aで盗塁阻止率5割を誇った強肩だそうだ。さらに彼がマスクをかぶった日は、防御率0.61とリードも悪くないようである。
ツインズにはラドキーのようなある程度完成された投手もいるが、サンタナ、ロースなど発展途上の若手投手の方が多い。その中を彼がどうリードしていくかは興味深い。
わずか1年目ではまだその才能をフルに活用することはできないだろうが、怪我もなく順調に経験を積めば、2,3年後には面白い選手になっているだろう。
それは何より「アメリカ」が選んだ選手なのだから。