グレッグ・マダックス

サイヤング賞5回、最多勝3回、最優秀防御率3回、ゴールデングラブ賞13年連続授賞。だがこれらの実績も、「90年代最高の投手」という肩書きの前では無意味だ。彼こそがその10年間でたった一人の投手の中の投手なのだ。
その投球の偉大さを説明するために、いくつもの文章が書かれた。
だがたった一つ、マダックスマダックスに至らしめている点をあげるとするならば、それは彼が全ての球種をピンポイントで自分の思うところに投げ込めるということである。
速球は140キロ前半しかでない。だがその速球も、サークルチェンジ、シンカー、カッター、カーブも全て彼は思い通りに操る。
例えば彼は、前の投球と同じ場所に寸分違わずに投げ込むことができる。この場合バッターは、ほとんど同じスピードで同じコースに来る、その球がどんな変化をするかを予測できない。前の投球の残像も頭には残っている。その結果、打球はバットの芯を外れる。あるいは空を切る。
たったこれだけのことで、彼は一つのディケイドのベストピッチャーにのし上がった。だがその単純な投球術を実行するのがどれだけ難しいかは、彼をそっくり真似した投手が未だ現れていないのでも明らかである。

そのマダックスが古巣カブスに帰ってきた。これでカブスは、リーグ1の豪腕ケリー・ウッド、リーグ1の総合力を誇るマーク・プライアー、才能ではその2人以上と言われるカルロス・ザンブラーノ、実力では3人に及ばないが10勝は期待できる堅実なマット・クレメント、そしてマダックスの5人で先発をまわしていくことが可能となった。
これだけの先発陣を持てばいやがおうにも期待は高まる。果たして10月には、59年ぶりのワールドシリーズでの試合を見れるのか。
その答えはまさに神のみぞ知るだが、カブスの先発陣がその59年の歴史の中でも最高の厚みを持ったというのは事実である。
この投手陣で勝ちあがれなかったら、いつ勝てるのだ。そういう気にさせる先発陣を持ったチームにカブスはなった。
だが彼らはまずプレーオフに進む前に、クレメンス、ペティトを補強したアストロズを倒さねばならない。
今年のナリーグ中地区は、面白くなりそうだ。