‘04ナリーグ優勝予想 東地区

     「優勝予想」
東地区      フィラデルファイア・フィリーズ
中地区      シカゴ・カブス
西地区      サンフランシスコ・ジャイアンツ
ワイルドカード  ヒューストン・アストロズ

「地区分析」
・東地区
優勝争いは、アトランタ・ブレーブスフィラデルフィア・フィリーズフロリダ・マーリンズの3チームにしぼられる。投手力・打撃力にチームワーク、ベンチワーク、フロント力を足した3チームの総合力を考えた場合、もっとも予想が難しい地区となった。
まずブレーブスフィリーズの2チームは、チームカラーがとてもよく似ている。ともにワグナー、スモルツという絶対的な守護神を持ち、ミルウッド、オーティスという超一流投手ではないが、一流投手ではあるエースがいる。そして先発陣には、エース以外に安定した投手を、それぞれ3人ずつかかえている。そのような良質の先発陣とクローザーに比べ、彼らをつなぐセットアッパーの人材は不足している点も共通。。
攻撃陣も同じ様に似かよっった打線だ。フィリーズでは昨季47ホーマーのトーミーが、ブレーブスでは二人合わせて昨季63ホーマーのチッパー、アンドリューの両ジョーンズコンビが、打線の核となる。その周りを20ホーマー前後の好打者数人で固め、得点するというパターンが、両チーム共通の攻撃の特徴。
かつては圧倒的な資金をもとに、毎年オフには豪華な補強をしてきたブレーブスだが、オーナー会社の不振もあり、今年は選手が出て行くだけで、大した補強もできていない。かわってここ2年間、積極的な選手補強をしてきたフィリーズが、今年もワグナーの獲得に成功した結果、2チームが保有する選手の総合力はほぼ等しいものになった。
そこで勝敗を分けるものは選手個々の能力だけでなく、チーム全体の気持ちというものになってくる。12年連続優勝をとげたブレーブスには今、勝利に対する慣れがチームを支配している感がある。そう思うのは、常勝チームから勝利に対する貪欲な執念のようなものがつたわってこないからだ。一方、長年地区優勝に見離されてきたフィリーズは、勝つことにとても飢えている。そのようなチームの雰囲気も加味して考えると、この2チームの争いになった場合、勝利をつかみやすいのはフィリーズのほうであろう。
ただ問題は、昨年「ミラクル・ミステリー」を引きおこしたフロリダ・マーリンズだ。今オフには3番を打ち、投打の要だったロドリゲスを筆頭に、クローザー、エースセットアッパー、先発投手1人、主軸打者1人、レギュラー野手と主要な選手を、球団の予算もあり、次々と放出した。代わりにそれなりの補強はしたが、選手の数字上の実績だけを見ると、パワーダウンの感は否めない。
だがこのチームは昨年のシーズン終盤、そしてプレーオフに入って見せた輝きで、格上の相手を次々に飲み込んでいった。そのときこのチームは、チームがチームであることの何たるかに目覚めていたし、それが勝利にもっとも近い方法であることも知っていた。もしその感覚を再び呼び起こせるならば、このチームの力は表面的なものだけでは決して計れなくなる。
チームの陣容は投手陣が23才のベケット、打撃陣が20才のカブレラが要になる選手。この二人はおそらくあと10年はオールスターの常連になるだろう。あと投手陣では01年のノーヒット・ノーラン達成者、A.J.バーネットの復帰もあり、先発投手陣には問題ない。ただクローザー、セットアッパーがぬけたブルペン層は、補強が完成しておらず、不安定である。
攻撃陣もロドリゲス、リーと主軸打者が二人もぬけ、長打力が落ちている。全体的に見て、経験以外のチーム力は昨年終盤より低下している。
ただフロントの野球を知る能力は地区一どころか、リーグ1といってもいい。オフに放出した選手もロドリゲスを除けば、土壇場に弱い選手だけを選んでいる。もし7月末のオールスター明けまで、首位とまでいかなくともワイルドカードを争う位置にいられたならば、フロントはプレーオフに向けて昨年のような的確な補強をしてくるはずだ。
問題は初夏までに勝率5割ラインを確保できるか。それがマーリンズの生命線になる。
 地区最下位争いはエクスポズとメッツの勝負になる。エースと4番を失ったエクスポズと、豊富な予算を的確に使えないメッツの争いは、順当なら高額選手を多くもつメッツに傾くだろう。
 妥当な予想では、フィリーズの優勝だが、チームとして再び機能しはじめるならマーリンズにも分は出てくる。ブレーブスは今年はチャレンジャーとして、勝利に貪欲さを見せれれるかどうかポイント。だが自己改革は簡単にはできないものだ。
 ブレーブス帝国の終焉で、戦国時代に突入したナリーグ東地区は、最後まで目が離せない戦いになるはずである。