野茂、200イニングの重み。

ロサンゼルス・ドジャース野茂英雄が、4月5日のパドレスとの開幕戦に先発する。開幕投手は昨年と、タイガース時代の2000年と合わせて、3度目の経験である。
昨年はチームの中で最多勝利(16勝)、最多投球回数を記録し、エースの座はゆるぎないものであったので、順当な決定だった。
野茂の昨年の投球回数は212イニング。メジャーでは年間200イニング以上を投げれば、一流投手の証なので十分な成績といっていいだろう。
だが野茂がすごいのはメジャー通算9年間で、投球回数200イニング以上を超えたシーズンが4度もあることだ。198、191、190回と190イニングを超えたシーズンが3度。そして9年間の平均投球回数は199イニング。これは驚異的な数字だ。
先発ローテーションが確立しているメジャーでは、シーズン162試合を5人の先発投手で乗り切る。この原則は、選手に平等の競争機会を与えるために、絶対に崩せない。そのため一人の先発投手は、どれだけ切望しても、レギュラーシーズンでは最大で、32あるいは33試合しか先発登板することはできない。最初に決められた33試合という中で、200イニングを達成するには、1試合平均6イニングは投げなければならない。
毎試合6イニング以上を投げることがどれほど難しいか。
それにはどんな体調でもある程度の平均した投球が求められるし、監督の信頼も勝ち取らなければならない。
そのため年間200イニングを投げるというのは、自分に克ち、味方の信頼を得た結果なのだ。それを達成したら、結果がついてくるのはいうまでもないだろう。
そしてそれを野茂は9シーズン続けている。それを驚異と言わずして何なのか、そしてそこに野茂の本当の強さがある。
実は勝利数といのは、自分が登板したときの味方の打線の得点力に大きく左右されるし、防御率というのも自分の投球を正確に投影すると思われがちだが、そうでもない。好調なシーズンが必ずしもいいわけでもないし、その逆もありえる。これは得点というのが偶然性に左右されることが多々あるせいのようだ。そのためかの精密機械マダックスも、勝利数や防御率はほとんど気にしていないそうである。
そこでもしその投手が本当に力のある投手かどうかを知りたいときは、勝利数や防御率ではなく、投球回数を見るといい。
もし200イニング以上投げてるシーズンが、複数あったら、その投手の力は本物といっていい。
野茂は今年も怪我さえなければ、200イニング投げるだろう。
そして彼の後ろには199イニング投げてきた9年間がある。
その重さが、野茂の投球を何より重くしている。