リトル松井、その成績はまず何と比較するべきか?

(昨季100ゲーム以上出場した遊撃手の打率内訳)
.300以上      4人
.290〜.299   3人
.280〜.289   1人
.270〜.279   4人
.260〜.269   3人
.250〜.259   7人
.250以下      3人




現在のメジャーリーグにおいて守備だけでレギュラーを奪えるポジションと言ったら、ショートとセカンドの2つしかない。
それは、キャッチャー、センターとともに守備のセンターラインを形成するショートとセカンドが、とても守備での重要性が高いからだ。
特にそれは内野の中でもっとも激務と言われるショートに強く求められる。その結果としてショートは、守備で食べていくことができる最後のポジションといっていい。
そのことを数字で表しているのが上の表だ。これは、昨季100試合以上に出場したショートの打率を表している。
30チームの中で100試合以上に出場したショートは25人いたが、彼らの過半数は打率.270を切っていた。3割を打ったショートは30チーム中わずか4人しかいない。それほど守備の負担が多いショートにとって、際立った打撃成績を残すことは難しいことなのだ。


打てるショートはメジャーでも少ない。このことを見方を変えて考えてみるならば実は「ショートは打てない」のでなく、「ショートには打つことより大事なことがある」ということでもある。
大事なこととは何か。もちろんそれは守備である。守備の重要性については、たとえばこういうこともいえる。もし平均して打率.250のショートがいたとする。ゴールデングローブ賞をとるまではいかないのだが、守備は非常に堅実である。もしそういう選手がいたならば、メジャー30球団の中で彼をレギュラーとして獲得するチームは何チームあるだろうか。
どう少なく見積もっても10チームは彼の獲得を考えるだろう。
それは上の表の打率.250以下の選手の数とぴったり重なる。ちなみに昨年では5球団には100試合以上出場したショートがいなかった。これはインディアンスのビスケルのようにレギュラーを故障で欠いたという理由もあったが、それ以外の4球団にはレギュラーをはれるショートがいなかったというのがその理由だ。
メジャーのショートにはすごいイメージばかりあるが、30球団全てにそのイメージ通りのショートがいるわけでは実はない。


だがそうは言っても、今をときめくジーター(ヤンキース .324)や、ガルシアパーラーレッドソックス .301 28HR)、A・ロッド(昨年はレンジャース .298 47HR)のように守備も上手いし、打撃も一流の攻守兼備のショートもいるじゃないかという意見もあるだろう。
だがはっきり言って、彼らショートのビック3は化け物だ。彼らが平均的なのではなく、あくまで彼らは突然変異なので、普通の選手を彼らと比べるのは酷過ぎる。
そうではなくショートとしての能力を正しく評価するには、まず守備ありきということが前提だ。
ではその守備力を計るものは何だろう。一つのモノサシは、シーズン通算のエラー数である。目安は20個。20個を切ればまずまずだし、15個以下なら安定しているといっていい。昨季アリーグのゴールデングローグ賞をとったA・ロッドの8個のように、10個以下になるとまさに超一流の守備レベルと呼べる。
ただナリーグのゴールデングローブ賞をとったレンテリア(カージナルス)でも13個であり、この辺で一流クラスと十分呼んでいい。


以上のようにショートにはまず求められるのは、何より守備の安定さ。メジャーでも平均よりやや上の守備力をもつリトル松井はその点にはまず問題がない。そのため打撃が多少悪くても、大きなスランプがない限り、シーズンを通して使われるだろう。
オープン戦での映像を見る限りでは、上体が前に突っ込み、自分のタイミングで打てていないというのが、松井に対する今の印象だ。これはメジャーに渡った日本人打者が一様に口にする、日本に比べ投手の投げるボールが重いということに関係しているのかもしれない。
パワーでは他の選手に比べアドバンテージを持たない松井は、フライよりはライナー性の打球を飛ばしたいと考えているはずだ。そしてそのためには、ボールを強くたたく必要がある。
だがメジャーの投手の球が重いことを実感しているあまりに松井は今、球威に負けないようなるべく前で、前で打とうしているのではないだろうか。その結果が上体が突っ込み、凡打を繰り返しているように私には見える。


ただ日本で3割前後の成績を残してきたリトルなら、2割5分前後の成績なら必ず残す。環境に慣れ、周りを見渡す余裕ができた時に、打撃はもう少し向上させればいい。
まずはメジャー初の日本人ショートとして、堅実な守備でチームに貢献してくれたら言うことはない。
メッツのオーナーが昨年得点不足に泣いた打撃陣の改革者として、リトルに期待するのもわかるが、まだそういう期待をするには早過ぎる。


それにオーナー、今年も得点力不足に泣きそうなのは、弱点だとわかっている中軸にいつまでも的確な補強をできないフロントの責任なのではないですか。
それとも日本人のファンは、いくら同国人とはいえ打たないショートには見向きもしなくなるとお考えなのでしょうか、、、、、。