ランサポート(RS)〜好投して勝てる投手、勝てない投手

「OPS」と同じく日本ではまだちょっとマニアックな数字だが、「ラン・サポート(RS)」という数字が最近、アメリカの野球雑誌などでよく見られるようになった。この「RS」というのは、ある投手が先発した試合で、味方打線が9回あたり平均何得点してくれたかを示す数字である。
そしてこのラン・サポートという数字が重視されるようになってきたのは、このRSから防御率を引いた値(これをバランス値という)で、ある程度の投手の勝利数予測することが可能とされているからだ。
それはバランス値によって、大体次の6つのカテゴリーに分けられる。


1、バランス値(RS−防御率) +2.0以上の投手
大きく勝ち越す。それも勝率7割5分を越すケースが多い。


2、バランス値  +1.0〜+2.0の間
2勝から6勝の勝ち越しになるケースが多く、接線に強い投手の場合は、勝率7割を越すケースも少なくない。


3、バランス値   0〜+1.0の間
勝ち越し数は1勝から3勝程度で、あるいは逆に同じ数で負け越しというケースも考えられる。接線に強い投手の場合は、5勝あるいは6勝くらい勝ち越す場合もあり。


4、バランス値  −1.0〜0 
3のケースと正反対で、1つから3つほど負け越すこすことが多い。


5、バランス値  −2.0〜−1.0
2つから6つ負け越しになることが多い。


6、バランス値  −2.0以下
大きな負け越しになる可能性が高い。負け数が勝ち数の2倍から4倍くらいになることが多く、最悪の場合は全敗というケースもある。



この6つのカテゴリーに当てはめてみると、野茂の昨年のバランス値は、
(ラン・サポート−防御率)=(4.08−3.09)=+0.99
となり、3番目のケースになる。
1つから3つまでの勝ち越しとなっているが、これは16勝13敗だった昨年の成績とほぼ重なる。
また昨年もっともRSが高かったのは、レッドソックスのロウだったが、彼のバランス値は(7.26−4.47)=+2.79で、1番目のケースとなる。
このケースの場合は大きな勝ち越しとあるが、その通りでロウは昨年17勝10敗と大きく勝ち越した。
このようにある程度の勝敗の差が、この「RS−防御率」で分かるというのが、近年ラン・サポートが表記されるようになってきた原因だ。


かといってこの「RS−防御率」で投手の勝敗が全て予測することはもちろん無理である。というのは先発投手の勝敗は、彼がマウンドを降りた後に投げるリリーフたちの成績にも深く関わってくるからだ。いくら先発投手のバランス値が高くても、チームのリリーフたちの力が脆弱だと、その勝ち星が消されてしまうことが起きる。
たとえばレッドソックスのエース、ペドロ・マルティネスの昨年のバランス値は3.81とロウより高かったが、14勝4敗という成績に終わっている。もっと勝敗数に圧倒的な差があってよさそうだが、実はこれはレッドソックスの救援陣が彼の足を引っ張ってしまったということでもある。たとえば昨年マルティネスが勝利投手の権利を獲得して、マウンドを降りた試合のうち4試合が、リリーフ失敗により勝利の権利が消滅してしまっている。少なくとも4勝を、マルティネスは自分の力以外のものによって失っているのだ。
というようにRSの存在によって、大体の勝敗数は予測することもできるのであるが、それだけでなく勝敗差を左右するには、チームメイトの協力といったものも不可欠だということも忘れられない条件なのだ。


※参考文献『ヒット・バイ・ピッチ』(マッシー村上著)