今、このチーム! 『フロリダ・マーリンズ』

     〔ナショナル・リーグ東地区〕 ※4月27日現在
  
                     勝   敗
1 フロリダ・マーリンズ       13   7
2 アトランタ・ブレーブス      11   9
3 フィラデルフィア・フィリーズ    8  10
4 ニューヨーク・メッツ         8  12
5 モントリオール・エクスポズ    5  16




メジャーリーグも開幕してからもうすぐこの連休で、1カ月になろうとする。開幕前に予想した通りの活躍を見せているチームもあるし、全く予想外のチームが活躍している場合もある。
そこでこのあたりでそろそろ今シーズン、特に注目してみたい期待のチームを紹介していきたい。


まず第1回目の今日は、ナリーグ東地区の首位を最初から走るとは予想しにくかったフロリダ・マーリンズ
この地区はここ2年間の補強で地区一厚い選手層をもったフィリーズと、衰えたとはいえ昨年まで12年連続地区優勝のアトランタ・ブレーブス、それにマーリンズの三つ巴の戦いになると思われていたが、マーリンズが早々と頭一つ抜けることになった。
昨年はあらゆるメディアの予想を振り切り、見事ワールドチャンピオンに輝いたマーリンズだったが、資金力のなさから、そのメンバーを全て残留させることができず、暫定チャピオンとしては苦しい戦いが強いられることも予想された。だが4月が終わろうとしている今、首位にいる。果たしてその順位は偶然であり、出来すぎなのだろうか。
以下はその選手たちの顔ぶれである。



(先発オーダー)※()内成績は昨シーズンのもの

1 CF ホアン・ピエール     .317 3打点(.305 1HR 39打点 65盗塁)
昨季の盗塁王。メジャーではまだまだ知名度が低いが、滅多に三振をしない点、選球眼がよくて、シュアなバッテイングができる点で一番に最適の打者である。大振りを決してせず、とにかく出塁を念頭におく姿はトップバッターとして頼もしい。センターの守備では肩は強い方ではないが、その俊足を生かして守備範囲はものすごい広い。守備でも安定感あり。


2 2B ルイス・カスティーヨ   .284 10打点(.314 6HR 41打点 21盗塁)
00年、02年の盗塁王。可愛い小熊のような丸々と太った体からは、想像できない俊敏さをもち、二塁の守備は鉄壁といっていい。昨年はゴールドグラブ賞を初受賞したが遅すぎるぐらい。ゴンザレスと組むニ遊間は、リーグ屈指のディフエンスとなっている。打撃はコツコツと当てるバッティングで、毎年3割前後は確実。昨年のワールシリーズではプレッシャーに弱い所を露呈してしまったが、若いチームの中堅どころとしては(29歳)、その汚名を晴らしたいところだ。


3 RF ミゲール・カブレラ    .312 8HR 19打点(.268 12HR 62打点)
昨年ウィリスとともにマイナーから彗星のごとく現れ、チームを救った20歳のヒーロー。 彼に関しては二つのことが断言できる。一つはレッドソックスの主砲マニー・ラミレスに匹敵する能力を持っていること。具体的に言えば、3割30本打てるバッターに、そして数年後には3割40本打てるバッターになっている。もう一つはあと10年はオールスターの常連になれる力をもっていること。尊敬するA・ロッドの打球と同じく、彼の打球は軽くミートしただけなのに驚くほど飛んで行く。かといって引っ張るだけでなく、右打ちが得意などそのバッティングはとても柔軟。21世紀のスター最有力。今年早くもその爆発が始まっている。


4 3B マイク・ローウェル    .303 5HR 15打点(.276 32HR 105打点)
パッジなきあとのチームリーダー。昨年はナリーグ3塁手として、前半戦トップの26本塁打を打ちながら、後半ケガで調子を出せなかった。変化球には弱いが、パワーもあり、何よりチャンスに強い打者なのが頼もしい。三塁の守備も強肩とアグレッシブさで高い素質を誇る。


5 LF ジュフ・コーナイン    .302 1HR 6打点(.282  20HR  95打点)
幼児のような素直さで、どんなボールも実に上手くミートする好打者。そのミート力はチーム一で、毎年打率2割8分、15本塁打は黙っていても期待できる。プレッシャーにも負けない強い心臓を持ち、チャンスにも動揺しない。38歳という年齢のために守備範囲は狭いが、堅実な守備である。


6 1B 崔 熙燮(チェ・ヒソプ) .294 6HR 10打点(.218  8HR  28打点)
カブスから、リーとのトレードでやってきた韓国人初の長距離バッター。
元々選球眼もよく、広角的に打てる器用さを持ちながら、左投手がとても苦手という弱点があった(対左投手への通算打率.043)。そのため左投手の時には交代され、今季もまだ2打席しか対戦してないが(いずれも凡退)、右投手からホームランを量産し始めている。力があるだけにいずれは、左投手苦手病も克服したいものだ。


7  C マイク・レドモンド    .333(.240  0HR  11打点)
昨シーズンは“球界最高の捕手”イバン・ロドリゲスのバックアップ捕手だった。キャッチングと強肩には定評があり、盗塁阻止率も4割近くあるので(33%が平均水準)守備の面で問題はない。バッティングには特に目をひくものはないが、リードなどのディフエンス面でしっかり働いてもらうことがチームには何よりだろう。


8 SS アレックス・ゴンザレス  .179 1HR 4打点(.256 18HR  77打点)
素晴らしい守備範囲を誇り、あらゆるゴロを平凡なゴロに変え、その強肩でヒット性のあたりも一塁上でのクロスプレーに変える守備の天才。中南米出身(ベネズエラ出身)の選手独特のバネを持ち、彼の守備からはあまりの柔らかさに音楽が聞こえてくるようなリズムがある。リトル松井が直線的な動きの守備なら、彼の守備は曲線的。一方、打撃はその潜在能力は高く評価されながらも、引っ張ることが多く未だ満開には至ってない。昨年のワールドシリーズ第4戦で見せた、サヨナラホームランのバッティングを続ければ、3割20本も夢じゃないのだが…。




(先発ローテーション)
・ジュシュ・ベケット    1勝2敗 防御率3.91    (9勝8敗 3.04)
球速、球威、球種、精神力、投手に必要な全ての要素を持つクレメンスの後継者。昨年このヒーローがプレーオフ中に、自らの中に眠る真の力に目覚めなければ、マーリンズの優勝は存在しなかっただろう。23才でワールドシリーズ終戦に、ヤンキースを完封してしまう実力はまぐれじゃない。カブレラと同じく、ケガがなければあと10年はオールスターの常連になるだろう。ピッチングの外観は、150〜160キロの速球を外角いっぱいに決め、140キロ台のチェンジアップ、130キロ台のカーブで打者のタイミングを外し、空振りさせる完全な本格派速球タイプ。同じ年のプライアー(カブス)とともに、超一流投手になるための階段をあがれるパスポートを保持している。


・カール・パバーノ     2勝 3.33     (12勝13敗 4.30)
将来を嘱望され続けていたその期待を今まで裏切ってきたが、昨年のワールドシリーズ第4戦で一世一代の投球を見せた。150キロ弱の速球に、よく滑り落ちていくスライダー、そして精密なコントロールという素晴らしい武器をもちながら、勝負所になると自分の力を発揮できないために、これまでは万年二流投手だった。もしその力をコンスタントに発揮できれば、常時15勝は期待でき、少なくとも負け越すような投手ではない。今季はシリーズでの好投がきっかけとなったか、まずまずの投球を見せている。


ブラッド・ペニー    2勝1敗 2.36     (14勝10敗 4.13)
ベケットとの100マイル(161キロ)・コンビ。球速は常時150キロを超え、球威もあるが、ベケットとの最大の違いはコントロールに難があること。そのためカウントが悪くなると、ストライクを取りに甘いボールを投げてしまい、そこを痛打されるシーンがよく見られる。チェンジアップやスローカーブなどゆるいボールも持ち、速球にも威力があるので、コントロールさえつけばすごい投手になるのだが、その才能をまだ全て活かしきっていない印象を受ける。もったいない!


・ドントレイ・ウィリス  3勝 0.71       (14勝6敗 3.30)
カブレラと同じく昨シーズン途中にマイナーから昇格し、怪我人の多かった先発陣を救った前半戦のヒーロー。左の変則的なフォームからキレのある145キロ前後の速球とスライダーを投げこむ。後半戦打ち込まれたのは、緩急の「緩」の部分の球種がなかったせいではないかという印象を受けたが、チェンジアップなどのその緩いボールを覚えればもっと面白い投手になるはず。誰よりも練習熱心な姿からチームメイト全てに愛されている21歳。いつも1サイズ大きな帽子を斜めにかぶっているのが、トレードマークだ。


・A.J.バーネット    登板なし    (0勝2敗 4.70)
01年にはノーヒット・ノーランを達成した元エース。昨年は右ひじの手術のために、わずか2試合でシーズンが終わった。そのためワールドシリーズはベンチからチームメイトを応援しなければならなかったが、エースとしてはつらいところだったろう。今年その飛躍が期待されたが、開幕早々再び右ひじを怪我してDL(故障者リスト)入りした。幸いケガは大したことはなく、5月には復帰できそうである。果たして手術後も150キロ台後半の速球は健在だろうか。復活が待たれる投手である。



(セットアッパー)
チャド・フォックス 1敗 6.75(3勝3敗3セーブ)
昨シーズン途中にプレーオフ対策用に、レッドソックスから獲得したリリーフピッチャー。140キロ台後半の速球に、スライダーが主な球種。球の威力、コントロールともに大きな特徴はなく、一流打者を抑えるのには苦労することが多い。




(クローザー)
アーマンド・ベニテス       10セーブ 0.71(4勝4敗31セーブ 2.96)
そのいかつい顔とは正反対に、実はとてもナイーブで、ガラスの心臓的なところがある。だが球種的には素晴らしいものを持っており、150キロ台の速球に、140キロ台のスプリット、高速スライダーとクローザーにはうってつけ。これまでは三振奪取率は高いが、コントロールに不安はあった。今季は4月で早くも10セーブをあげ、防御率も0点台と素晴らしいスタートを切り、自己改革が進んだのか?という状況を見せているが、それはこれからの戦いで分かるだろう。



とういようにセットアップに人材がいないという点は、シーズン前の状況と変わらないが、予想外のプラス・アルファはクローザーのベニテスの大活躍で、これがマーリンズ首位の原因の一つとなっている。
だがこれから戦力を整えたフィリーズや、古豪ブレーブスの巻き返しも予想される。そのときマーリンズはどう戦うか。
一つのポイントは、怪我人がでないこと。予算に余裕がないマーリンズにはレギュラーが1セットしかなく、半一軍の選手が少ない。そのため怪我人が出た場合、代役の選手が元からいないに等しい。一人ならトレードで代わりを獲得することもできるが、複数現れるとその穴を埋めるのは不可能だ。
その点が最大の心配点だが、それ以外は3チームとも戦力的には互角。そしてチームワークでは圧倒的にマーリンズがいい。この混戦のままシーズンが過ぎていき、試合の最後を締めるベニテスが最後まで落ち着いていられるのならば、それはマーリンズにとっては願ってもない展開になるだろう。接戦になったときの強さは、もう昨年のプレーオフで万人が目にしていることなのだから。