月間 チームに一言! アメリカンリーグ編〈3〉

・「西地区」順位    ※現地5月10日現在
                     勝    負    ゲーム差
1 アナハイム・エンゼルス      22   10      −
2 テキサス・レンジャース      19   12     2.5
3 オークランド・アスレチックス   15   16     6.5
4 シアトル・マリナーズ       12   19     9.5


・(アナハイム・エンゼルス
とうとうエンゼルスが、西地区で全く予想外の進撃を4月に見せたレンジャースをとらえ、9連勝の末に首位にあがってきた。センターを守る主砲ギャレット・アンダーソン、ライトのティム・サーモン、一塁のアースタッドとレギュラー3人を、ケガで4月の下旬から失いながらも、首位到達は、攻守の選手バランスのよさのせいだ。
最大の弱点だと思われていた先発陣は、ずば抜けた成績を残しているものはいないが、多くが防御率4点台前半という「中の下」クラスの投球を維持しており、平均的な投球ができれば、後にはリーグ屈指のブルペンが待っている。ブルペンには、まさにエンゼルたちの守護神となる豪腕パーシバルや、02年のワールドシリーズでヒーローとなった通称“F・ロッド”のフランシスコ・ロドリゲス、新台頭のケビン・グレッグなどおり、終盤のシーソーゲームになったら、彼らが無類の強さを発揮する。
心配だった先発陣が及第点の投球ができれば、元々心配のなかった打線は予定通り爆発し、攻守のハーモニーは混戦の西地区で最高となる。
「現在最高のオールラウンドプレイヤー」と言っていいゲレーロや、元ホームラン王のグロース、強打の外野手ギーエンの中軸3人が打ちまくり、ゴールドグラブ賞キャッチャーのモリーナもしっかり3割をキープ。
ここに前述の3人がケガから帰ってくるわけだから、まさに地区優勝の大本命だ。


・(テキサス・レンジャース)
エンゼルスの5月1日からの9連勝によって、首位からは陥落したが、それでもここまでの若手野手たちが爆発した快進撃は立派。とにかくよく打っており、レギュラー9人のうち7人が打率3割を超え、チーム打率もいまだ.310と、リーグのチーム打率で他を圧倒的に引きはなしている。
さらに3割を超えている、7人の打者の平均年齢は26歳と、大変に若く、レンジャースの未来は明るい。
問題は今年どこまで優勝争いを続けられかだが、それは今予想を反して好調を保っている投手陣が(チーム防御率はリーグ14球団のうち、6位)、どこまでその予想を裏切りつづけられるかにかかっている。このチームの弱点はここ何年も、不安定な投手陣なのだ。
今は39歳の軟投派エース、ケニー・ロジャースが踏ん張っているが、彼がはたしてシーズン終盤までもちこたえることが出来るだろうか。
そのため去年、1昨年と続いた怪我から復帰した朴賛浩パク・チャンホ)に、かつて野茂と同僚だったドジャース時代のような活躍を期待したいのだが、まだエンジンはかかっていないようだ。
一方ブルペンのほうは、速球派クローザーのフランシス・コーデロが一人立ちし、ベテラン・セットアッパーのジェイ・パウエルも近年まれな好投をしており、安定感をつくりだしつつあるので、いやがおうにも先発への期待は高まる。


・(オークランド・アスレチックス
今年もティム・ハドソンマーク・マルダーバリー・ジートの3人は、メジャー最高の先発3本柱だと言いたいところだが、左腕ジートが今のところ防御率6.17とつまづいている。代わりに先発4番手で、マーリンズから獲得した同じ左腕のレッドマンが、健闘しているが、地区優勝を狙う大勝負をかけるには、ジートのような超一流投手の力が絶対に必要だ。とはいえ「A・ロッド」や、彼のような力のある選手は黙っていても自分にふさわしい成績を最終的には残してしまうので、心配はいらないはず。
むしろ気にかかるのはブルペンの方で、マリナーズか獲得した新クローザーのアーサー・ローズや、中継ぎの柱ブラッドフォードが要所を抑えられていないことのほうが、傷は深いのではないだろうか。
打線は、毎年2割5分前後の打率だったDHのデュラーゾが3割をキープしたり、主軸の万能外野手ダイや攻守兼備でリーグ屈指の3塁手チャベスもそれなりに打っているが、エンゼルスやレンジャースと比べたときに、もう一つ迫力にかける状況だ。具体的にいえばパワーで押すのか、つないで得点するのか、特徴が感じられず、脅威感を相手に与えていない。そのため、「出でよ、新戦力!」といったところだ。


・(シアトル・マリナーズ
メイド・イン・ジャパンの精密機械イチローがいるマリナーズは現在、ここ3年間のメジャーリーグ最高勝率チームとは思えないほど、凡ミスを繰り返すチームになってしまっている。例えばリードしている試合の終盤期待のリリーバー・ソリアーノ(現在故障中)が、バント処理ミスから失点しまったり、防御率や打率などの客観的なデータより、そういう気の抜けたプレーが目立つことの方が心配だ。
そういうチームのムードを無視すれば、今のマリナーズは単純に打てない、守れないために、最下位に落ちている。
打線のほうでは3割バッターは一人もおらず(最高はイチローの.295)、ブーン、イバネス、エドガー、オルルドの主軸4人はそろって打率.250前後を低迷し、打力補強のために今オフ獲得したショートのオーリリアも.220、2番のウィンまでが.233という低打率ではあまりにも苦しい。
投手のほうもツインズから獲得した、大魔神・佐々木の後釜グァダードが防御率1.29と素晴らしい抑えとして君臨している以外は、先発・ブルペンともにパっとしない。
ただ長年チームの期待を裏切ってきた万年エース候補の、フレディ・ガルシアが、今年はここまで素晴らしい投球を続けており、希望もある。
打てない、守れないチームが今、ドン底にいるのは確かなので、あとはあがるだけだが、それもチームに勝利への執着心が復活することにかかっている気がする。