変化球2

サークルチェンジ

カットボールとともに90年台に流行したボールで、現在でもメジャーリーグでもっとも人気のある変化球(チェンジアップの改良型)といってよいだろう。
その理由は速球と同じ腕の振りで投げられるために、バッターに球種を悟られにくく、タイミングを外すのに効果的なのと、ヒジへの負担が少ない点にある。
弱点としてはコントロールのしずらさがあるが、それを克服すると、素晴らしい武器となる。シンカーと同じく、右投手なら右に、左投手なら左に沈んでいき、バッターのタイミングを外し、バットの芯を外した当たりでゴロを誘発させる。シンカーと異なる点は若干球速が遅い点だが、一見して区別するのは難しい。
150キロ以上の速球を持つ本格派の投手が、このサークルチェンジをマスターすると、恐るべき威力を発揮し、緩急のタイミングでバッターを、完全に幻惑する。昨年ガニエはこのチェンジアップと、155キロ前後の速球のコンビネーションで大活躍。サイ・ヤング賞を獲得した。
名前の由来は、「OKサイン」のままボールを握る、見た目から来ている。

フォーク

ワンバウンドになるフォークを、どうしてバッターは振ってしまうのだろうと昔から不思議に思っていたが、それはバッターが「振るか、振らないか」を判断するポイントでは、ストライクになるように見えるからなのだそう。
そのようにフォークがワンバウンドすることが多いのは、高目に入るとあまり落ちないのに、低めに入ると鋭く落ちる性質のためだ。変化の仕方もその性質を受け継ぎ、初めは大きく落ちないが、段々地面に近づいていくと、ぐわっとダイナミックに落ちる。そのために、バッターは錯覚しやすい。
スプリット・フィンガード・ファーストボールと下に落ちるという点で変化は似ているが、速球と比べたとき、数キロ遅いほうがスプリット、15キロ〜20キロ遅いボールがフォークと区別できる。
野茂英雄、そしてクレメンスなどのフォークボールが有名。


ナックル


18歳の女子高校生でも、定年退職した60歳のおじさんでも、時速100キロ前後のナックルを、10球中7球ストライクゾーンに投げ入れることができたのなら、明日からでもメジャーリーガーになれる可能性をもっている。なぜならナックルだけを8〜9割投げていれば、ナックルボーラーとしてやっていけるからだ。
木から落ちた枯葉が、風に吹かれて、上に下に舞い上がるように、ナックルの変化も空気の抵抗をうけて、右にいったり、左にいったり、落ちたり、まるっきり空気任せの動きをする。
遅いから打ちやすいというのは全くの誤解で、球速は無くとも、その動きはほとんど予測不可能。何しろ普通のピッチャーの時より、一回り大きいミットを持って構えている、キャッチャーでさえ、その変化球についていけず、捕球できないことがあるぐらいだ。
そのためバッターが手こずるのも無理は無い。長い間日本では、ナックルボールは日本人バッターには通用しない、あれは大振りするメジャーリーグのバッターだからこそ通用するのだという考え方が一部にあったが、それも松井秀喜が渡米し、レッドソックスの誇るナックルボーラーウェイクフィールドとの勝負に苦戦する姿がTVに流れることで、完全に過去のものになった。
剣豪なら木から落ちる葉を一刀両断できるかもしれないが、バッターが時速100キロとはいえ、飛んでくるダンシングボールをバットでぶったたくのは至難の技だ。

ただナックルには宿命とも言える弱点があって、球速が遅いために、盗塁され放題という一面も持つのはご愛嬌。

ナックルカーブ

ごく大雑把に言えば、通常のカーブより速く、そして大きく曲がるカーブのこと。ナックルとの相似点は、進みにつれて空気抵抗がだんだん強くなることで(ナックルは初めから強いが)、その結果曲がりが大きくなる。
ヤンキースのムシーナが開発したボールで、彼以外ではハラディ(ブルージェイズ)、A.J.バーネット(マーリンズ)などのごく少数の選手しか投げられない。
問題は人指し指一本をボールに立て、その指にひっかけて投げるために、コントロールが極めて難しいこと。だがナックルカーブがその真価を発揮すると、打者の膝元をかすめて、ホームベースを横切り、外角に抜けていくという衝撃的なシーンも目撃できる。


※この3回は、マッシー村上氏の「ヒット・バイ・ピッチ メジャーリーグTV観戦ガイド」を大いに参考にしています。