変化球

カーブ

別名ブレーキング・ボール。(その由来はカーブが来たら、バッターは速球に合わせていたタイミングに、ブレーキをかける必要があるから)
言わずとしれた変化球の代名詞で、右腕投手なら左に、左腕投手なら右に曲がっていく。弱点としては、カーブには回転のいいスピンがかかっているので、当てらればホームランになりやすいということだ。
日本でカーブと言えば、一種類しかないが、野球大国アメリカでは一口にカーブと言っても多彩なバリエーションがあり、特によく使われるカーブの種類だけでも次の5つがある。

  • 「ハード(パワー)カーブ」

球速もあり、曲がりも大きく、球威も重そうなパワフルなカーブのこと。

  • 「12 to 6カーブ」

トゥエルブ・トゥー・シックスカーブ。
時計盤の12時のところから6時のところに移動するくらい、大きく落ちるカーブということ。重力にまったく逆らわず、大きくすとんと落ちていく。和名で言えば「三階カーブ」に当たるだろうか。
史上最高の「12 to 6カーブ」の持ち主は、伝説の左腕サンディー・コーファックスだが、アスレッチクスのエース・ジートのカーブも、コーファックス以来の「12 to 6カーブ」と評価が高い。
日本で言えば、引退したオリックス星野のカーブが、この種類だろう。

  • 「オーバー・ザー・ヘッド・スロー・カーブ」

打者のタイミングを外す、時速100キロから110キロ台のスローカーブのこと。コントロール重視の軟投派投手にとっては、投球の幅を広げてくれる絶好の球種。もちろん速球派が、速球とからめて使っても、効果は絶大。

  • 「ニー・バックリング・カーブ」

スバラしくアメリカ的なこのネーミングのカーブは直訳の通り、バッターのヒザ元をえぐるようにして内角低めに切れ込んでくるカーブのこと。

  • 「レイトブレイキング・カーブ」

ブレーキの必要性に気づくのはレイト(ちょっと後)、との言葉通り、ホームプレート付近にきてから変化を始めるカーブのこと。

スライダー

これまた変化球の王者で、基本的には速球のようなスピードを持ち、打者の手元で横にスライドしていくボール。
ただ現在ではカーブ同様さまざまなバリエーションがあり、横だけでなくタテに変化するスライダーや、カーブのように曲がりが大きいスライダー、ほとんど速球と変わらない球速で飛んでくるハードカーブなどがある。
スライダーを右投手なら右打者の外角に、左投手なら左打者の外角低めを狙ってなげると、バッターからどんどん遠ざっかっていくので、バッターにとっては打ちずらく、当たったてもバットの先端でゴロになりやすいので、よくこのパターンは使われる。

面白いのは全く逆に右投手が左打者のインローに投げると、カットボールのようにバッターに食い込み、ファールなることが多いのだが、日本とは違いアメリカではそのような「ファールを打たせて、カウントを稼ぐ」目的でスライダーを使用しないそうだ。
それは15三振を奪い、完封する投手より、90球で完封してしまうマダックスカブス)のような投手の方を、最高の投手であるとするアメリカらしい。
代表的なスライダーの持ち主としては、カブスのプライアー、レッドソックスペドロ・マルティネスで、特にプライアーのスライダーは、まるでボールが生きているかのように、ストライクとボールの境界線を掠めていく。

シンカー、スクリュー

右投手なら右に、左投手なら左に沈んでいくボール。左投手が投げるシンカーがスクリューと呼ばれる。チェンジアップ、ツーシームと変化が似ており、その違いを一言で言えば球速の差だけ。
実はアメリカにはシュートという表現がないが、この球種が日本で言うシュートボールに当たっている。
外角ギリギリをつく変化球がスライダーなら、内角ぎりぎりをつくのがシンカーの特徴だ。
ただ腕が曲がる反対方向に向けて投げるために、スライダーほどはスピードは出ず、緩急の「緩」部分を担当している。まれにパワーシンカー(別名シンキングファストボール、ハードシンカー)といって、シンカーなのに150キロを超す球を投げる投手がいるが、その代表格はメッツのクローザー・ルーパーだろう。調子がいい時の彼は、ヤンキース打線でも攻略が難しい。
個人的にメジャーで最も美しいシンカーを投げる投手はデレク・ロウ(レッドソックス)だと思っているが、彼のシンカーは右45度の傾斜で空間を横切っていく、まるで教科書のようなシンカーだ。