ファースト・ゴールは70勝

タンバベイ・デビルレイズの年間目標は毎年シーズン70勝(92敗)なのだが、チームができてからの6年間でまだ一度もその謙虚な目標は達成されていない。
今年こそは、去年やっと育ってきてくれた若手選手への期待もあり、70勝のゴールはこえるはずだと予想されていたたものの、5月が終わった段階では、チームには不調が続き、今年も例年通りとても70勝達成は無理だという雰囲気が漂っていた。
チームからは、その不振の理由は日本でやった、他チームとは1週間早い開幕戦のせいでペースを乱されていたせいだという声まで出ていた。
だが6月が始まると信じられないペースで、勝って、勝って、勝っていく。そして気がついてみれば6月25日には、最大で18もあった借金(負け越し数)を返してしまったのである。(27日現在:35勝35敗)


その躍進の原因は、スーパースターと呼ばれる大物はいないが、これからの未来がある若手と中堅どころの選手たちが団結し、バッターたちが一つの線になり始めていることだ。また線にならなければ、この短期間でこれほどの勝ち星をあげることはできない。
生え抜きではタイプが異なった3人が、それぞれ自分の持ち味を出している。昨年22歳で盗塁王に輝いたクロフォードは今年も盗塁王レースを独走し、打率は3割をきちんとキープ。彼が一番に定着すれば、3番にはイチローと同じくアベレージヒッターでありながら、チャンスに強いクラッチヒッター、ロッコ・バルデリが入り、後ろには3割30本は毎年期待できる、広角打法の大男ハフが控える。
彼らデビルレイズ3兄弟の周りを固めるのは、華はないが堅実なルーゴに、その才能は誰もが認める万能外野手ながら、永遠に未完の大砲でいそうなホセ・クルーズJr、そしてヤンキース20世紀末の黄金時代に、不動の5番だった長老ティノ・マルティネスだ。
移籍組みの彼ら3人も大爆発はないが、クロフォード、バルデリ、ハフの3人衆を援護するには十分な働きをしている。
あと問題はシーズン前から予想されていた投手陣の弱さなのだが、チーム防御率がリーグ11位(14チーム中)ながら勝ち続けられているのは、クローザーのファイアーボーラー・バイエスと、セットアッパーの軟投派ランス・カーターが、なんとか終盤の相手の攻撃を最終戦で防いでくれているのが大きい。


実は20世紀以降のメジャ−リーグで借金18を返してしまったチームは、今回のデビルレイズで初めてなのだそうだ。
100年の歴史の中で初めてというのは意外な気がするが、それはまた負け続けた者たちの気持ちを再び変化させるのは、とても難しいということの現れかもしれない。
そういえば02年の終盤ではアスレッチクスが14連勝を飾り、マリナーズでは安泰だとい思われたアリーグ西地区チャンピオンの座を最後に持っていってしまった。
アリーグの東地区にはヤンキースレッドソックスというとてつもなく重い蓋がのっかているために、ワイルドカード獲得(3地区の優勝チーム以外で、最高勝率の1チームがプレーオフに出場)すら難しいのは現実だが、それでも楽しみは残してくれた、デビルレイたちの大借金返済だった。