MLBの薬物問題

先日メジャーリーグ最高執行責任者(COO)デュバイ氏が、今シーズンからマグワイアも使用していた、筋肉増強剤アンドロステジオンの使用を禁止してていたということを、AP通信に明らかにした。
マグワイアがそれでまでのシーズンホームラン記録を抜いた98年には、アンドろステジオンはすでに国際オリンピック委員会(IOC)の禁止薬物リストには入っていたが、大リーグは使用を認めていた。しかし今年4月、米食品医薬品局が販売を禁止したのを受け、大リーグもとうとう使用禁止に踏み切った。
ご存知の方も多いだろうが、現在メジャーリーグでは薬物使用の問題が大きく取り立たされている。昨年に陸上男子100メートルの世界記録保持者であるティム・モンゴメリ選手が、連邦大陪審に召喚された際には、彼は栄養補助食品の社長から聞いた話として、社長がバリー・ボンズに筋肉増強のためのステロイドを渡しているということを直に聞いたと証言したし(もちろんボンズは使用を否定)、パドレスのウェルズは昨春に出した自伝の中で、「25〜40%」の選手が薬物を使っていると述べている。


僕個人の意見としては、メジャーリーグの選手の中に禁止されている薬物を使っている選手たちは、まずいるだろうなと考えている。
そうでなければ使用を疑われているボンズや、サミー・ソーサジオンビなどは、さっさとドーピング検査を受ければいいのに、彼らは使用を否定するだけで、自分の身の潔白さを証明する行動には何ら移っていないのが理解できない。
あまつさえソーサなどは記者から、検査を勧めたら怒りだす始末。これでは信じる方が無理だ。
ただこの状況を許している原因は、メジャーリーグ機構にもある。マグワイアのアンドロステジオンは禁止が遅れたためについ昨年まで合法的であったわけだし(だがマグワイアは99年からは使用をやめたとコメントしている)、ドーピング検査にしてもNBANFL、そしてオリンピックでしている検査に比べれば、その基準ははるかに甘い。
MLBが本気で薬物問題に取り組むならば、まずドーピング検査のレベルをオリンピックと同じレベルに持っていくことから始めるべきだろう。


メジャーリーグの薬物問題を取り上げたニュースを見たときに、上の文のように選手だけを責める気にはどうしてもなれないというのが、今の僕の正直な気持ちだ。
それはルールの網をくぐって薬物を上手く使えば、確かに筋肉は増え、パワーもつくのかもしれないが、薬を飲んだ選手たちはそれ以上の大きな対価を払っているとしか思えないからだ。
例えば昨年の春キャンプでは、オリオールズにいた23才の投手が熱射病で死んだが、検視結果ではダイエットのために常用していたサプリメントの中に入っていたエフェドラという興奮剤が、その死に影響していたことが明らかになっている。
これは一般論だが、ボディビルダーが筋肉増強のために使用するサプリメントが、内臓に悪影響を与える例を思い出すまでもなく、不自然なほどはっきりとした効果が出る薬というのは、同じくはっきりした副作用を持っているものではないだろうか気がしてならない。
一番気になるのは彼らがその副作用も理解して、薬の使用を選んでいるか、ということだ。


禁止されている薬物を使うことは、ルール違反なのは間違いない。
だがルール違反の取り締まりを、いつまでも強化しないのはなぜなのだ。
(来春予定の野球のW杯では、オリンピック並のドーピング検査が決定)
あるいはなぜできないのか。
今取りざたされている、薬物問題の最大の原因は、そこから発生しているのではないだろうか。