タイガースと3人の先発投手

去年のデトロイト・タイガースはとっても弱かった。本当に弱いチームだった。シーズン通算で119敗(43勝)もしてしまったが、これはニューヨーク・メッツが創立1年目の1962年に記録した120敗に次ぐ歴代2位の記録だった。
それもこれも打撃陣と投手陣の両方に人材が、見ていて悲しいくらい足りていなかったからだ。特に投手陣が、壊滅的だった。
アリーグの最多敗戦投手は、1位が21敗のマロース、2位が19敗のボンダーマン、3位が17敗のコルネホ。
アリーグ防御率ワースト3のうち、2位がマロース(5.73)、3位がポンダーマン(5.56)。
アリーグ被打率ワースト3は、1位がコルネホ、2位がマロース、3位がボンダーマン。
というようにタイガースの先発投手3人が、裏の投手タイトルをほとんど独占した。特にマロースは、エースながら21敗もしてしまい、23年ぶりに現れた20敗投手になってしまった。
19敗のボンダーマンも、首脳陣がまだ20歳だった彼の将来を危惧して、先発ローテーションから降ろしていなければ(首脳陣の正式なコメントとしては「今年は無理をし過ぎているから降ろす」というものだったが)、20敗投手になっていただろう。
また投手陣の緊急事態は先発陣だけではなく、クローザーにもおよんでいた。本来のクローザーをつとめるはずの100マイルボーラー、マット・アンダーソンは怪我からの復帰をうまく飾れず、5月にはマイナーに降格していった。
代わりにマイナーから6月に昇格してきたフェルナンド・ロドニーが、クローザーをつとめたが、1年終わってみての彼の成績は、「27試合登板 1勝3敗3セーブ 防御率6.07」というものだった。
そんなばかなと思える数字である。クローザーと言われなければ、これがクローザーの成績とは、とても信じられない成績に終わってしまった。
結局タイガースは1年間、先発投手は大量失点を奪われ、それでも打線が爆発して試合終盤に逆転してみれば、そのリードを守り切れる投手はブルペンにはいないという状況を味わってきた。これではタイガースも勝てなかったはずである。



今年も投手陣の内容は昨年とあまり変わっていない。ボルティモア・オリオールズから昨年10勝(10敗 防御率4.18)をあげたジェイソン・ジョンソンという投手が先発陣に加わり、ワールドチャンピオンのフロリダ・マーリンズからクローザーのアービナが加わった以外には大きな変化はなく、前述の3人が先発ローテーションに入る陣容は変わらない。
それでは今年も先行き不安な感じなのかと言われれば、実際そうなのだが、唯一の救いはボンダーマンが21歳、コルネホが25歳、マロースが27歳と投手陣の年齢が比較的若いこと。昨年の彼らの乱調も、経験不足だったという点を抜きには語れない。
今年はその若い投手陣を成長させるために、マーリンズから球界最高の捕手イバン・ロドリゲスを獲得した。ロドリゲスは昨年に、同じく若い選手が多かったマーリンズの投手陣から絶大な信頼を勝ち取り、その巧みなリードによって彼らの才能を引き出すことに成功した。彼のリードによる若い投手たちの成長がなかったら、マーリンズワールドシリーズに行くこともなかっただろう。
タイガースはその再現を願っている。若い発展途上の投手が多いタイガースの現状を考えると、そのトレードも利にかなっているといえよう。
もっとも攻守にあまりいい補強ができていないタイガースは、今年も厳しい戦いを強いられるのは間違いない。だがロドリゲスの加入はいくらかでも、タイガースに向けて勝利の微風を吹かす要因になるはずだ。
しかしこのトレードのただ一つの問題点をあげるとすれば、まだ発揮できていない潜在能力の大きさが、今のタイガースの若い投手たちと比べると、昨年のマーリンズの若い投手たちの方がはるかにあったように見える点である。
ただタイガースとてよもやこのトレードだけで、ワールドシリーズ進出を真剣には考えていないだろうから、過大な期待をしなければいいのだろう。まずはチームの骨格作りを、というところからだろうか。



そのタイガースはまだ8試合しか消化していないが、開幕5連勝という驚きのスタートを見せた。先発の3人も、移籍してきたジョンソンもそろって1勝をあげている。特に昨年の先発を外されたときに、怒りをあらわにする負けん気の強さを見せたボンダーマンが、2試合で15奪三振を見せる快投を見せている。
まずは、滑り出しは上々のようだ。